2009年、決断のとき

夜の街を歩いていると、厚手の丸まった白紙が追いかけてくる。風に吹かれてこちらを追い抜き一歩手前を転がっていく。そいつの意思とは無縁に、ただ風に吹かれて転がっていく。車道を走る車のライトに照らされて、白さが増す。おまえはどこに行きたいのか。いや、おまえはどこに行きたいわけでもないな。風だけがおまえの行く先を決めている。
12月になったのだから、寒さが増して当たり前なのだけど、やはり12月も半ばになると寒くなってきたなと実感するし、ああ、今年ももう終わるね、という話になると、ああ、今年ももう終わるんだなとやはり実感するし、一方でただ暦の上で一周しただけのことに過ぎないというひねくれた想いも同時に抱く。クリスマス、クリスマス・・年賀状、年賀状・・大掃除、大掃除・・忘年会、忘年会・・と毎年同じ単語を心の中で繰り返し呟き、師走は忙しいというイメージを既成事実のように思い描くが、実際そんなことはたいしたことじゃないわけだが、忙しぶればそれがいいみたいな、かっこいいみたいな、暇してるとかっこ悪いみたいな、そんな世間体みたいなのは糞喰らえで、今年はもう仕事納めにしてしまったから、年末はゆっくり出来ると油断したら、昨日も今日も一足早く寝正月みたいな生活を送ってしまったから、いけないと思って明日からは、年賀状とか大掃除とかやろうと決意している。だから、きっと、年賀状は元旦に届くと思うのです。

そんな寝正月みたいな生活中に2ちゃんねるをみていたら今年のカイエの編集部ベスト10が書いてあった。

1. Les Herbes Folles(アラン・レネ
2. Vincere(マルコ・ベロッキオ
3. イングロリアス・バスターズクエンティン・タランティーノ
4. グラン・トリノクリント・イーストウッド
5. Singularidades de uma Rapariga Loura(マノエル・ド・オリヴェイラ
6. Tetro(フランシス・フォード・コッポラ
7. The Hurt Locker(キャサリン・ビグロー)
8. Le roi de l'evasion(アラン・ギロディ
9. トウキョウソナタ黒沢清
10. Hadewijch(ブリュノ・デュモン)

ああやはりアラン・レネなのですね、と思ってしまったが、やはりそれよりもオリヴェイラ。10日ほど前に101歳になったわけだが、相変わらず年1本ペースで撮っているようだ。果たして現役最年長の撮影現場というのは一体どんなものなのかというのはとても気になる。さあ、次のシーンという時に、監督が冷たくなっていることだって絶対にないとは言い切れないわけだ。それにしても日本には全く入って来ない。「夜顔」から既に4本くらいは撮っているはずだ。ベロッキオもコッポラもいつ日本に来るのか。

などと色々と書いていたのだけど、聞こえるのだ。寒い中、猫が発情している声が窓の外から聞こえるのだ。いまにも途切れそうなほどの甲高い鳴き声だ。何匹かいる。発情している。猫が発情しているのだ。夜に。
そして僕は今年を振り返る。一言で片付ける。怠惰だった。少しだけ具体的なことを付加する。やる気を出さず、何も進歩せず、ぐうたらだった。まるで駄目という一年。しかし悔いはなし。進歩はせず、しかし後退せず。現状は維持した。なんと志の低いこと。しかし悔いなし。今年は息抜き、箸休め。そろそろ褌締め直すべし。やると決めたらやるべし。
今年の変化。iPhoneにした。以上。